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スロヴァキアフィル [コンサート]

B.Smetana: 連作交響詩「わが祖国」より 「モルダウ」
F.Chopin: ピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.11
 (Encore)F.Chopin: エチュード Op.10-5 「黒鍵」
A.Dvořák: 交響曲第9番ホ短調 Op.95 「新世界より」
 (Encore)A.Dvořák: スラヴ舞曲 Op.46 No.7

  スロヴァキアフィルハーモニー管弦楽団
  レオシュ・スワロフスキー(cond.)
  宮谷里香(Pf.)


モルダウはさすがの十八番。モルダウってこんなに哀しい曲だったっけ? と驚いた。
出だしの頼りなげなパッセージから、川が流れ出しても、なんだかとても哀しげなのだ。
落ち着いたテンポのせいだろうか? 寒い冬の、雲が重くたれこめた空のような感じ。
寂しいというほど湿っぽくもなく、儚げというほど弱々しくもなく、諦めというほど暗くもない、
でもやはり通奏低音のように悲哀がたゆたっているのだ。
曲が盛り上がっきても、人間の活気を感じさせるのではなく、ただひたすら自然の厳しさ、
激しさを思わせる、不思議な演奏だった。

さて、ショパンのピアノコンチェルト。うーん… なんだかなぁ。
モルダウのときにも少し気になったんだけど、奧の管楽器の音がとても響くのに対して
手前の弦楽器がどうも響かない。管にかぶさられて音が広がれない感じ。
3階席の前の方という席の位置のせいかもしれないけど。
で、ピアノも響かない。というか…、私の率直な印象では、ピアノが「歌わない」。
下手とか、私の好みとココが合わないとか、具体的にどこがどうというわけではなく、
最初から最後まで、ピアノの「音」は聞こえても「声」は聴こえなかった。
なんというか、愛と情熱が足りない感じ? この曲が大好きだーとか、ピアノを弾くのが
すっごく楽しい!、あるいは音楽に没入して恍惚の境地、そういうなにか。
またこの曲、オケが極端に退屈な曲なのだ。ひたすらピアノの伴奏、盛り上げ役。
オケの人も真面目にやってたと思うけど、こういう曲でオケが単独で盛り上がるのは
そりゃ無理だろう。ということは、ソリストの情熱に巻き込まれて初めてオケも生きるのに、
その「なにか」がないから、淡々とお仕事状態、にみえる。
それに、オケが完全な伴奏だからさほど気にはならなかったのだけど、微妙に揃って
いないような。だんだんやる気が失せてきたのか、3楽章はちょっとひどかった。
ピアノとオケも、イマイチ呼吸が合っていない。
もしかしてこのソリストさん、コンチェルト経験があんまりないのかしらん。
ロビーで売ってたCDもソロばっかりだったし。ショパン弾きではあるみたいだけど。

休憩を挟んで、ドヴォルザーク。
オケもお疲れなのか、いったん落ちたテンションが休憩しても復活しなかったのか、
もたつくとかではないのだけど、ちゃんとインテンポなのに、妙にキレが悪い。
今度はオケが主役だけあって、肝心なところでバラけるのが非常に気になる。
弦楽器は相変わらず伸びないし、加えて管楽器が少々品がないほど主張するので、
弦の音が半分かき消されてしまうような感じだった。

アンコールのスラヴ舞曲も、あれだけ軽快な曲なのに、踊りだしたくなるようなリズムの
キレがない。気分が盛り上がっているのに、身体が疲れてついていかない、みたいな。
モルダウは良かったけど、全体の印象としてはなんだかなぁ、というしかない感じ。

それと…、どうも客席の雰囲気がよくなかった。
たぶん、今日のお客さんのかなりが、普段は全然クラッシックに興味がない人だと思う。
初めての人がコンサートに来ることに文句をつける気はない。楽章途中で拍手をしようが、
拍手のタイミングが早すぎようが、私は特に気にならない。
ただ、主催者さん。
客席を満席にするために興味がない人をかき集めるのは、お願いですからやめてください。

誰もが知っているあの有名な「新世界より」だけど、通すとかなり長い。
興味がない人が退屈するのも、無理はないのだ。
みんなが知ってるメロディのときはいいんだけど、ふだん聴かないところに来ると、
会場の空気がどんどん弛緩していくのだ。「なんだこの曲、長ぇ~、まだ終わらないのか?!」
という感じ。楽章の切れ目では、「やっと休憩!」と緊張を解いた咳払いの嵐。
第4楽章の冒頭で、「あ、知ってる!」といわんばかりのほっとした空気が流れ、
いっせいに会場が聴く態勢に入ったのには、脱力した。
こういう人たちが、何千円も払って見にきてるかな? そうは思えない。

繰り返すが、ふだんなじみのない人が来ること自体は喜ばしいことだと思う。
ただ、そういう人たちが会場の空気を支配するほどにたくさんいた、というのは…

で、間違いなくこういう空気は演奏者に影響を与えるのだ。オケの微妙なキレの悪さも、
原因の何割かはこのせいだと思う。そういうのって、とてもかなしい。
Pコンのときから、「知らない曲だし」という空気は色濃くあった。美人ピアニストを見ていれば
ある程度飽きないからか、まだマシだったけど。

いろいろで、なんだか妙に疲れる演奏会だったのでした。
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