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Grieg: Piano Concerto [ピアノ協奏曲]

エドヴァルド・グリーグのピアノ協奏曲イ短調op.16。
なぜだか突然、この曲が聴きたくてたまらなくなった。
この曲は大抵シューマンのピアノ協奏曲とカップリングされている。
調性が同じで構成や作風に類似点が多いからだとか、グリーグ自身シューマンの協奏曲に
影響を受けたのだとか、いろいろ言われているし、似ているといえば類似点はたくさん指摘
できるのだけれども、曲そのものから受けるイメージはずいぶんと違うと思う。
シューマンがいかにもロマンティックなやわらかみと甘さが前面に出ているのに比して、
こちらは北欧の厳しい自然を思わせる、激しくも美しい、どちらかというと毅然とした
イメージを強く感じる。


第1楽章、Allegro molto moderato。ティンパニのトレモロに始まり、冒頭のピアノは急な
崖をどんどん降りてゆくような、急激な下降音形。この不安定な音の連なりが、すでに
ノルウェーの厳しい気候や景色を思わせる(私はノルウェーに行ったことはないのだが)。
哀愁に満ちた第一主題がオーケストラによってどこかたよりなげに展開される。
しかしピアノによる同じテーマの繰り返しは、なぜだかやわらかく甘やかな感じがする。
ピアノのパッセージは軽やかに哀しみのカケラをまき散らし、第二主題のつかのまの
長調への転調は、わずかにのぞいた晴れ間のような、はかない希望。
展開部の、管楽器が受け渡してゆく、不安にふるえるようなメロディと、その背後に
聴こえるさざなみのようなピアノのアルペジォの美しさ!
カデンツァはピアノのつぶやきに始まり、押しひそめた激情が次第に開花してゆき、
激しく吐露され、やがてふっと力が抜けて諦めの境地に至るよう。
あるいは自然の怒りを叩きつけるような驟雨が通り過ぎたのだろうか。

第2楽章、Adagio。波に揺られるようなゆったりとしたテンポに乗って、オーケストラによって
歌い上げられるメロディは、まるで風景画をみるかのような、静かで穏やかで少し淋しい、
自然の描写。それを飾るピアノは、人々がその自然に寄せるあたたかい愛着のように思える。

第3楽章、Allegro moderato molto e marcato。
ドラマティックな冒頭、足を踏み鳴らして踊る舞曲のような、歯切れの良い主題。
オーケストラのメロディに重なる華やかなピアノのスケールやアルペジォは、
華やかでありながら、懐深く、広がりにみちた印象を与えている。
展開部のフルートの美しさは、新雪に覆われた山肌に射す朝日のように、どこまでも
澄み切って、なんて清らかで、神々しい。
短いカデンツァを経てコーダでは3拍子となり、テンポもどんどん早くなる。祭りの終盤、
今が最後と踊り狂い、やがて踊り疲れた人々はどこまでも大きな自然に頭を垂れ、
ひれ伏すのだ。雄大で、荘厳な、まさに北欧の風景が目の前に浮かぶよう。
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