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Summer Concertante ~シューマンからメシアンへ~ [コンサート]

Erik Satie: 右や左に見えるもの~眼鏡なしで
Igor Stravinsky: (ヴァイオリンとピアノのための)デュオ・コンチェルタンテ
Maurice Ravel: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調
Robert Schumann: ヴァイオリンソナタ第1番 イ短調 op.105
Olivier Messiaen: (ヴァイオリンとピアノのための)主題と変奏
M.Ravel: ツィガーヌ
 (Encore) 武満徹: 雨の樹・素描II ~オリヴィエ・メシアンの追憶に (Pf.)
        Matthew Hindson: Song of Life (Vn.)

 木村かをり(Pf.)  吉本奈津子(Vn.)
 

金沢21世紀美術館友の会のスペシャルコンサート。
なんとも趣味の良い選曲に、何日も前からワクワクドキドキだった。

チケットは事前予約しておいて当日引換え。そしてそのチケットはナンバリングしてあって
順番に入場して好きな席を取れる、という、かなり珍しいやり方。
そうとは知らず、引換えの時点で座席指定だと思っていた私は開演時間間際まで
のんびりとカフェで過ごしてしまったのだが、幸いにもけっこういい席が空いていて、
とてもラッキーだったし、予想に違わず、すてきなコンサートでした。


1曲目、サティ。初聴。1~2分というきわめて短い3曲からなる。
「偽善者のコラール」「手探りフーガ(五里霧中)」「たくましい幻想曲」、とプログラムでは
訳されていたが、「偽善的なコラール」「暗中模索のフーガ」「筋肉質なファンタジー」という
訳もあるらしい。個人的には後者の訳のほうが好きですね。
いかにもサティらしい、とっても変な、わけのわからない断片という感じ。
(サティは有名な曲はわりとマトモだけど、後のは曲もタイトルも変のひとことに尽きる)
後のトークで、指示がとっても変で(「脳みそを広げるように」とか)悩んだ、という話が
あったのだが、たしかにとても迷いがある感じを受けた。
どう音を出していいのかわからない、みたいな。

2曲目のストラヴィンスキー。これも初聴。訳すと「協奏的二重奏曲」だろうか。
1.世俗歌曲(Cantilène)   2.牧歌(Églogue)I   3.牧歌II 
4.ジーグ   5.酒神頌歌(Dithyrambe) 
の5曲からなる。1曲ずつのタイトルも解説もプログラムには記載なし。ちょっと不親切。
先ほどに続き、どうもヴァイオリンが鳴らないなぁ。と思っていたら、3曲目あたりから
急に少し鳴り出した。4、5曲目と、だんだん音が伸びてくる。鳴らないのは音楽用と
いうわけではないホールのせいかな、とはじめ思っていたんだけど、何だったんだろう?
というわけで、とくに前半は茫漠としていて、イメージがよくつかめなかった。勿体ない。
(YouTubeでパールマンの演奏を聴いてみたら、すごく格好いいじゃないか!)
ジーグのピツィカートを多用した弾むようなリズム、デュオニュソス頌歌の美しいメロディが
印象に残った。しかしあの静かで透徹したメロディがデュオニュソス??

トークをはさみ、3曲目、ラヴェルのヴァイオリンソナタ。
大好きな曲なので、ヴァイオリンが鳴りだしてからで良かったー、としみじみ。
悪くはなかったのだが、うーん、ちょっとパンチ不足? とっても上品にまとまっている感じで、
頼りなげなメロディなんか、本当に頼りない感じだったのだけど、私が思うにラヴェルは、
一見そう見せかけても、実は計算されつくしてる、と思うのだ。今にも倒れそうに見える
不均衡な構造物とか建築物が、実はきちんと計算されてバランスをとっているみたいに。
その辺の冷徹さとか、肚のすわった迫力とか、そういうのが少し物足りない。
この曲はもっともっと格好良くなるのを知っているだけに、ちょっと残念。

休憩のあと、シューマン。かなり良かった。吉本さん、かなり上品な演奏をされるので、
むしろこういうロマン派の方が合ってるんじゃないかな、と思った。安心して聴ける感じ。
それも、このシューマンはどちらかというと暗い曲だけど、もっと明るい、ブラームスの
雨の歌とか似合いそう。

で、このあとまたまたトーク。木村さんは実はメシアンに直接師事したことがあるということで、
ちょっとしたエピソードとか、本人に意図などを訊ける現代曲と楽譜しか手がかりのない
古典曲、演奏者としてどう感じるかとか。

それでメシアンなのだが、とても驚いた。
まずヴァイオリンの吉本さん。急に音が2倍くらい大きくなった感じ、とても伸びて綺麗。
この曲、現代曲が苦手な私にもとても美しいと感じられたのだが、どっちかといえば現代曲
だろう。それで、さっきの比喩を使って、ラヴェルが壊れないように緻密に計算するなら、
メシアンはいつ壊れるか、という緊張感とか、壊れるまでの刹那の美を楽しむものだと
思った。そうすると、彼女の持ち味の上品さ、繊細さがとても生きてくるのだ。
ロマン派が似合う、と思ったのを修正。現代曲の一部はもっと似合うかもしれない。
(わざと軋ませたり掠れさせたりする類のはダメだろうけど)
そして木村さん。これまでずっと、伴奏に徹していたのだ。本当にベテランだなぁと感動しつつ、
これ以上やるとヴァイオリンとバランスが悪くなるとわかっていても、でももうちょっと聴きたい、
ソロで聴きたいなぁ、と思わせるくらい、ちょっと物足りなさがあった。
なのに、この曲ではやはり師の曲だからなのか、がっぷり四つに組んで、気迫が違う。
結果として、素晴らしいデュオだった。

最後のツィガーヌ。長大なヴァイオリンソロ、吉本さんの気迫はさすがだった。
音色を多少無視しても迫力を取るのは、この曲については正解だと思う。
が、ちょっと無理をしている印象は否めなかったのが正直なところ。特に後半。
持ち味の繊細さを放っぽり投げてしまうと、少し痛々しいような。
うーん、彼女のヴァイオリンがこういう音色とか弾き方に向いていない、のかな?

アンコールはひとりずつ。
木村さんの武満は、素晴らしかった。一音一音が、綺麗でしかも丁寧。
音のひとつずつに表情があるのだと、それをひとつずつ丁寧に表現している感じで、
改めてピアノの音って綺麗だなぁと実感した。
吉本さんの方は、オーストラリアの現代作曲家の曲で、私にはよくわからない分野。

全体として、選曲の妙はもちろん、演奏も、いろいろと書いたものの、デュオとしては
本当に素晴らしくて、これほど巧く合っているのを聴くことはなかなか経験できない。
ということで、とても気持ちよく音楽に浸れた2時間あまりでした。
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