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OEK・ピヒラー×バイチ [コンサート]

L.v.Beethoven:
 「コリオラン」序曲 Op.62
 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
  *  *
 交響曲第2番 ニ長調 Op.36

  リディア・バイチ(Vn.)  ギュンター・ピヒラー(Cond.)
  オーケストラ・アンサンブル・金沢


11月19日のOEKの定期公演。
ベートーヴェンは嫌いではないのだけれど、たいていは室内楽なので、こういうプログラムの
コンサートに行くのは、正直なところ初めてである。
少し思うところがあって、ベートーヴェンの交響楽を聴いてみたくなったのだ。
ちなみに今回からOEKのフィルハーモニー・シリーズの会員になりました♪
というわけで、初の指定席鑑賞である。

道が混んでいたせいで、会場到着が開演時刻を2分ほどオーバーしてしまった。
半ば諦めモードだったのだけれど、5分ほど押したらしく、「間もなく開演です」の声が!
階段を駆け上がり、チケットをもいでもらってプログラムを受け取るのももどかしく
(この時点ですでにチューニングの音)、2階席へとふたたび階段を駆け上がる。
会場にすべりこんだところで指揮者さんが登場、一番後ろの隅っこの空いていた席に
座っての1曲目となった。息が上がっていて、落ち着いて聴くどころではなかったので、
コリオランについてはもうひとつ印象が残っていない。もったいない。



プログラムの解説によれば、「コリオラン」は劇の序曲として作曲されたものの、実際には
劇の上演に使用された記録はなく、現在でも独立した演奏会用序曲として演奏されるのだ
とのこと。でも… やっぱりこれは、なにか物語が続かなくてはならない、という印象が強い。
終結部の、不安をそそるような、途中で断ち切られたような印象は、語られるべき物語が
待ち受けていてこそ生きるものだと思うのだ。ここで終わってしまってはいけない、という
感じで、なんとなく拍手をするのが躊躇われてしまった。

さて、ヴァイオリンコンチェルト。
これについては、もう、まったくフェアじゃないことは重々承知の上なのだけど…
普通のときに聴いていたら、かなり好感のもてる演奏だったのではないかと思うのだけど…
あの、みどりさんのを聴いた直後だと、どうしようもなく、物足りないのだ。
比較してはいけないと思うそばから、あの音が頭の中によみがえってしかたがない。
艶があってまろやかな、毛布の手触りのような音は素敵だったし、十分に巧いとは思うの
だけれど、でも、そういう表現で表わせてしまうというか…
みどりさんのが、ありとあらゆる色を混ぜ合わせた、深みのある、変化に富んだ色合いだと
すれば、リディアさんのは、いってみれば青は青、赤は赤、その範囲の変化でしかない。
みどりさんのが、たくさんの食材から抽出した味をさまざまに組み合わせ、混ぜ合わせた
深みのあるダシだとすれば、リディアさんのは十分に美味しいとはいってもやっぱりコンソメ
キューブからは単なるコンソメ以上の味わいは出てこない、みたいな。
リディアさん、ゴメンナサイ! できればみどりさんの前に聴きたかったです。
あーあ、やっぱりヴァイオリン聴けなくなっちゃったなぁ…

休憩をはさんで、交響曲第2番。なんというのか、いかにもベートーヴェン、な曲。
最近ベートーヴェンのピアノ曲に、どうも面白くないなぁ、という印象をもっていた。
曲は好きなのに、弾いていてワクワクしない。なんでだろう、と考えていて、結局のところ
ベートーヴェンはオケの人だったのかな、という仮説にいたったのである。
つまり、小さなオケ曲をピアノ1台でやってしまおう、というのが、彼のピアノソナタなのじゃ
ないかということである。だとすると、その曲がいわゆる「ピアニスティック」になるはずが
ないのは当然。そして、技量の足りない者が弾いても、オケの多彩さを表現するには全然
足りなくて、だからつまらなくなってしまう。そういうことなのじゃないか。つまり彼のピアノ曲
には、技術的な面よりも別の面でのものすごい難しさがあるのじゃないか、と。
というわけで、ちょっとシンフォニーを生で聴いてみたかったのだ。

やっぱり、曲のイメージは、ピアノ曲もオケ曲もあまり変わらない。ただ、オケの場合は
さまざまな楽器があって色とりどりな彩色が可能だから、とても華やかで変化に富む。
同じモチーフでも、楽器が変わり、音域が変わるとずいぶんと印象が違う。
それに、とても音の厚みがある。ほとんど常に、ほとんどすべての楽器が参加している。
ベートーヴェンには重厚、荘厳という印象が強いし、本来軽やかなはずの緩徐楽章でも、
どちらかというと落ち着きやゆったりした印象が先に立つのは、そのせいだろうか。
ピヒラーさんの指揮は、特に重厚というわけでもなかったと思うが、そういう印象だった。

ではどんな指揮だったかというと、かなり立ち上がりが鋭い感じ。攻撃的、というのとは
少し違うかな。でもかなりの鋭い迫力、真剣勝負のようなピリリと張り詰めた空気があって、
羽が生えたように軽やかに舞うようなふだんのOEKとは、まったく違う演奏だった。
いつもは同じ曲をそれぞれ違う指揮者と違うオケの組み合わせで聴いているから、
指揮者の個性とかオケの個性とかいわれてもいまいちピンときていなかったのだけど、
指揮者さんによってこれほどにも演奏が変わるのかと、初めて実感した。

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