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ストラディヴァリウス&デル・ジェス [コンサート]

2011.1.29(土)15:00~ @北國新聞赤羽ホール
Jean-Marie Leclair: 2つのヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ長調 Op.3-2
  *  *
Camille Saint-Saëns: 序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 Op.28
Henryk Wieniawski: 華麗なるポロネーズ第1番 ニ長調 Op.4
  *  *
Moritz Moszkowski: 2つのヴァイオリンとピアノのための組曲 ト短調 Op.71
  *  *
<特別企画>~同じ曲を2つのヴァイオリンで聴く~
Johann Sebastian Bach: 独奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 BWV1006より 「ガヴォット」
  *  *
Fritz Kreisler: ウィーン奇想曲 Op.2
          愛の喜び
Franz Waxman: カルメン幻想曲
  *  *
Pablo de Sarasate: ヴァイオリン二重奏曲「ナヴァラ」 Op.33

 渡辺玲子(Vn.)  Guarnerii del Gesu 1736 Violin "Muntz"
 有希・マヌエラ・ヤンケ(Vn.)  Stradivarius 1736 Violin "Muntz"
 江口 玲(Pf.)


先日、大変興味深いコンサートがあった。
イタリア・クレモナ産のヴァイオリンの双璧、グァルネリ・デル・ジェスとストラディヴァリウスの、
しかも同年製作、いずれもムンツ氏が所有していたことから、同じ「ムンツ」の名で呼ばれる
2台の共演、いや、饗宴である。

日本音楽財団は数々の名器を所有しており、一流の演奏家に無償で貸与しているのだが、
その代わり、貸与された演奏家はこういったチャリティコンサートに出演する。
つまり、最高の楽器と一流の演奏家による、超豪華なコンサートなのだ。
しかも! プログラムの他に、財団が所有する楽器のカタログが配られ、さらにさらに、
演奏会終了後、無料でCD(これと同じコンセプトで前年に東京で行われたコンサートの
ライヴCD)を配布するという気前の良さ! で、4000円である。
いくらチャリティにしてもこれでは赤字になるんじゃないかと心配になってしまうほど、
いろいろな意味で贅沢なコンサートでした。


まずはヴァイオリン2台のソナタ。バロックらしい、明朗な曲である。
こういうコンセプトのコンサートだけに、どうしても演奏そのものよりもヴァイオリンの音色に
注意が傾いてしまうのだけど、ふたつの旋律が絡み合っていても、それぞれがしっかりと
個性を主張する。掛け合いのところなんかでは、それがとても顕著だった。
驚いたのは、2台とも、音量の豊かさ。ヴァイオリンってこんなに大きな音がでるもの
だったっけ? と、本当にびっくりした。

次は有希さんのストラディヴァリウスとピアノのデュオで2曲。
ストラディヴァリらしい、明るく華やかで豊かな音。だけではなくて、力強い音色にも
厚みがあって、どっしりと踏ん張ってお腹の底から声を出しているかのような迫力。
その音色の多彩さは、本当に変幻自在、ただただ溜息をつくしかない。

モシュコフスキは3人で。
伴奏の江口さんは、存在感と控えめさとが絶妙に同居している。
ヴァイオリンの2人は、その音量の豊かさからも、たった2人とは思えないほどに
広がりのある、大きな音楽を奏でる。最終楽章では、どんどん速くなるテンポでの
2人の超絶技巧による掛け合いが本当にすごかった。

ここで音楽財団の方からのご挨拶。実際に貸与されて弾いていた方からきいた
ヴァイオリンの特性なんかを話してくださった。
グァルネリは男性的で、こっちを向いてと言うとわりあいに素直に向いてくれるけど、
ストラディヴァリウスは女性的で、「あなたの言うことなんてきかないわよ」っていう感じの
難しさがあるとか… ツンデレヴァイオリン?

次はなじみのあるメロディを聴き比べてみようという企画である。
有希さんのストラディヴァリは、オペラ歌手の声のように、豊かで、音が天に向かって
果てしなく広がっていくような、そんなイメージ。
玲子さんのグァルネリは、すっとまっすぐに立つ樹木のような、あるいはスポットライトの
ような、広がりよりも、どこまでもまっすぐ一筋に伸びてゆくイメージ。
有希さんは華やかなフリルのついたローズピンクのAラインドレス、玲子さんはすっきりした
Iラインの濃紫のドレスだったのだが、色といい形といい、その楽器の音にあまりにも
ぴったりで、とても心地が良かった。

そして、玲子さんのグァルネリで、クライスラーを2曲。
クライスラーは甘い印象ばかりを持っていたけれど、玲子さんの演奏は、しっとりとした、
オトナのクライスラー。甘く囁くよりも、のびやかに歌い上げる感じだった。
かなりの音量だけど、豊かというよりも、すらりとした、でもしっかりと芯のある音なのだ。
続いてカルメン幻想曲。これも表情が本当に多彩に変わる、すばらしい演奏である。
徒に激情に走るのではない、しかし奧にひそめた情熱ははっきりと感じられる、
落ち着いた大人の色っぽさ満載の演奏だった。

最後のサラサーテの「ナヴァラ」は、スペインらしい陽気な曲想の曲。
なによりすごかったのが、超高音部のヴァイオリン二重奏! こんなのはじめて聴いた。
しかも、どちらもものすごく安定した演奏で、どんなに高くなっても音は澄んで美しく、
本当にすばらしかった。

いただいたCDのコンサートは、玲子さんが2台のヴァイオリンを持ち替えて弾き比べて
いるものだった。純粋にヴァイオリンの音を聴き比べるのなら、そういう風に同じ演奏者の
方がいいのだろうが、今回は2人の(2台の)共演が聴けて、私はこちらの方が嬉しい。

ちなみにグァルネリは一族みんなヴァイオリン製作者で、いちばん有名なジュゼッペ・
「デル・ジェス」は、日本語に訳せば「イエスのグァルネリ」で、今風に訳すのなら
「神!」って感じの呼び名だよなぁ、なんてしょうもないことを考えてしまった。
だってコンサートのタイトルが、ストラディヴァリウス&デル・ジェスで、グァルネリじゃ
ないのがなんとなく変な気がしたからなのだ。

ま、タイトルはともかく、本当にすてきなコンサートでした。
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