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OEK・郷古廉×井上道義 [コンサート]

2011.3.21(月・祝)15:00~ @石川県立音楽堂コンサートホール
Gioachino Rossini: 歌劇「アルジェのイタリア女」序曲
Claude Debussy(arr. Henri Büssel): 小組曲
 1. 小舟にて   2. 行進   3. メヌエット   4. バレエ
Albert Roussel: 小組曲 Op.30
 1. 朝の歌   2. 田園曲   3. 仮面舞踏会

   *  *
Édouard Lalo: スペイン交響曲 ニ短調 Op.21

(Encore) Erik Satie: ジムノペディ第2番
       J.S.Bach: 無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番 BWV1005より ラルゴ

   郷古 廉(Vn.)    井上道義(Cond.)
   オーケストラ・アンサンブル・金沢


OEKの定期公演。
最初に、オーケストラのみなさんが楽器を持たずに登場。そして井上さんが出てきて、
このたびの大震災の犠牲者たちに、団員とお客さん、みなで黙祷を捧げた。
団員のみなさんがいつもの燕尾ではなく、ブラックタイを着用していたのは、弔意を
あらわしていたのだろう。
今回の若きソリスト、高校2年生の郷古廉(すなお)君は、宮城県多賀城市の出身で、
おうちは幸いにして無事だったそうだが、慣れ親しんだ街の姿は見る影もなく、ライフ
ラインもまだ復旧していないなかで、それでも音楽をやるために金沢に来てくれたのだ。
生きていてくれて、あなたの音楽を聴かせてくれて、本当にありがとう。


さて、仕切り直してコンサートの開幕。今日は管楽器大活躍のプログラムだった。
1曲目のロッシーニは、弦楽器の静かなピツィカートにオーボエの美しい旋律がふんわりと
乗る序奏に始まり、歯切れの良い弦楽器、オーボエとフルートの掛け合いが印象的。
暗いムードを吹き飛ばすような、快活でスピード感あふれる音楽を聴いていると、
全身に音楽がしみこんでゆくような感覚にとらわれた。
考えてみれば、自宅でもニュースをかけてばかりで、音楽を聴いていない。
自分では普段どおりのつもりだったけれども、いつのまにかカラカラ、カチカチのスポンジ
みたいになってしまっていたのだと気づいた。そこに、豊かな水が染みわたり、ふっくらと
満たされて生きかえってゆくのが実感できた。音楽って、本当にすばらしい。

次は(プログラムではルーセルとなっていたのだが)ドビュッシーの小組曲。
もともとはピアノ連弾の曲で、友人のビュッセルがオーケストレーションしたものだ。
やさしく、ロマンティックで、愛らしい曲集。オーケストレーションもすばらしい。
メロディはいろいろな管楽器に受け渡され、変化に富んだ、色彩感豊かな世界を
作っているし、ハープがアルペジォを奏で、打楽器も効果的に使用され、弦楽器の
透明感ある音色がひろがり、まさに印象派の絵画のようである。

3曲目にルーセルの同タイトルの曲。だがこの曲は、全体の印象はロマンティックだが
音使いは現代に足を踏み入れた感じ。フランスというより、スペインのイメージ。
「朝の歌」は、朝の爽やかなイメージというよりは、都会っぽい印象だった。
小鳥が鳴き交わす一方で、さあ行くぞ!というような勢いのある曲想で、満員電車に
突撃!とか、大事な試合とか試験のある朝みたいな気合が感じられた。
「田園曲」も、むしろ港のような印象を受けた。のたりのたりとした真昼の海に、
ゆっくりと大きな船が入ってきて、人々は気だるげにシエスタ中、という雰囲気。
「仮面舞踏会」は、狐と狸の化かしあい、というとあんまりかな。いろんな人がいろんな
思惑や欲をもって集っているような、そんな印象。

休憩をはさんで、いよいよ廉くんの登場、スペイン交響曲。
女は耳で恋をする、なんていうが、実際私は声のいい人に弱いのだ。
そして、廉くんのヴァイオリンは、まさに腰が砕けそうな美声だった。
曲よりも、ヴァイオリンの音そのものに心を鷲づかみにされてしまうほど。
魅惑的な音にノックアウトされたのは、ピアノのホルヘ・ボレに続いて二度目の経験だ。
この曲の間、私の耳の穴は、きっとハート形になっていたにちがいない。

また演奏も、なんというか、本当に色っぽいのだ。決して大人の色気ではないのだが、
でも子どもでもありえない、とてもおとなびた天才少年というのがぴったり。
(そういうイメージにドンピシャな架空のスーパー高校生が頭の中に思い浮かんでいた
のだけれども、あまりにもマニアかつ微妙な形容だな…)

「スペイン交響曲」というだけあって、スペインの情熱的で官能的なリズムやメロディが
随所に見受けられるんだけど、雰囲気がありすぎて怖いくらいだった。
どうしてこんな演奏が17歳にできるのだろう?

アンコールは、OEKによるジムノペディ、これは鎮魂の祈りなのだろうか。
そして廉くんのバッハ。えーと、バッハがこんなに色っぽくていいのでしょうか。
いや、世俗曲だしね、シャコンヌみたいな曲もあることだし、いいのかもしれないけど、
でもなんだか倒錯的。たとえてみれば、Gacktが般若心経となえてるみたい(?)
最後に少しお話ししてくれたところでは、ふつうの少年という印象だったんだけどなぁ。

本当に将来が楽しみなヴァイオリニストである。また金沢に来てくれると嬉しい。
地元では大変でしょうが、あなたの音楽に出会えたことを、心から嬉しく思います。
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