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IMA日本海交流コンサート [コンサート]

2011年8月27日(土)15:00~ @石川県立音楽堂コンサートホール

Ottorino Respighi: リュートのための古代舞曲とアリア 第3番
  IMA弦楽アンサンブル&OEK
P. de Sarasate: カルメン幻想曲 Op.25
  山根 一仁(Vn.)
Erich Wolfgang Korngold: ヴァイオリン協奏曲二長調 Op.35
 (Encore) Nathan Milstein: パガニーニアーナ
  クララ=ジュミ・カン(Vn.)

  *  *
M. Ravel: ツィガーヌ
  南 紫音(Vn.)
P.I.Tchaikovsky: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
  ホァン・モンラ(Vn.)

  井上道義(Cond.)  オーケストラ・アンサンブル・金沢


先日の講師陣の演奏会に引き続き、今度は過去の優秀な受講生たちのコンサートである。
これだけコンチェルト形式の曲をたっぷり聴けるコンサートもなかなかなく、しかもソリストが
みんな別の人なので、それぞれの個性の聴き比べという意味でも非常に興味深い。
若い演奏家のヴァイオリンをたっぷり堪能しました。


まずはレスピーギの弦楽合奏。
IMA弦楽アンサンブルは18名とのことだったので小編成の曲かと思ったら、OEKメンバーと、
それから先日のコンサートで聴いた文屋さんのコントラバス講習会の生徒さんも入って、
かなり大きな編成だった。
「リュートのための」とあるが、オリジナルがリュートのための曲であって、それをレスピーギが
弦楽合奏用に編曲したもので、この曲自体にはリュートは入っていない。
イタリアーナ-宮廷のアリア-シチリアーナ-パッサカリアの4曲からなる、とても美しい
組曲である。たしかに古風なメロディや和声が随所にみられ、少しパイプオルガン風の
重厚な箇所もあり、しかし現代風の洒脱な雰囲気も兼ね備えた、気持ちのいい曲だった。

さて、ここから若きヴァイオリニスト4人の競演である。
一人目、山根くんは16歳、高校一年生。昨年、中学生にしてIMA音楽賞受賞、音コン1位
という期待の新星である。
なんというのか、もう、なんでそんなに色気があるの?!とビックリするほど、高校生とは
思えない音のつややかっぷり。思えば郷古廉くんのときも同じことを感じた気がするが、
まったく最近の高校生ってホントにどうなってるんだろう、とか思ってしまうほど。
もっともふたりとも、お話を振られると、年相応の初々しい感じなんですけれどもね。
まぁとにかく、本当に色っぽい音で、サラサーテには本当にピッタリだった。
特筆すべきは、高音の美しさだろう。多かれ少なかれヴァイオリンの最高音域は金属的な
音になるものだと思っていたけれど、山根くんの高音部は、澄み切った口笛のような
まろやかでさわやかな音で、強く惹き込まれた。
ラストの方で、オーケストラを引きずるようにどんどんテンポアップしていったんだけど、
その技巧の素晴らしさも、若さも、とっても好感度高し。
有無を言わさずオケを巻き込むほどの迫力はまだないけれど、このまま行けば素晴らしい
ヴァイオリニストになりそうな予感がたっぷり。

二人目、クララ=ジュミ・カンさんは去年もこの日本海交流コンサートに出ていて、とても
素敵な演奏が強く印象に残っているのだが、まだ21歳かな?
コルンゴルトというのは、聞き覚えのない名前だと思っていたのだけれど、オペラ「死の都」
の作曲者だと井上さんから解説があって、思い出した。昔、関西で演奏会形式のこの曲を
聴いたことがあるのだ。どうもそのときの指揮も井上さんだったみたい…?
で、そのコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲なのだが、映画音楽をたくさん手がけた人で、
このコンチェルトも映画音楽のモチーフを使っているというだけあって、非常にストーリィを
感じさせる、華やかでドラマチックなものである。
それをクララ=ジュミさんは、情感たっぷりに歌い上げる。その表現力にはただただ脱帽。
第2楽章の張り詰めた高音、第3楽章の歯切れのよい超絶技巧、どれも素晴らしい。
まさにオーケストラを従えて、堂々たる女王の風格たっぷりの、もはやベテランといっていい
演奏だった。来年あたり、今度はIMAの講師としての演奏が聴けるんじゃないかと期待。

拍手が鳴り止まず、ブラヴォーの声に応えて、アンコールを。パガニーニの24のカプリス
第24曲を、ヴァイオリニストのミルシテインがより超絶技巧を駆使するよう編曲した、
パガニーニアーナ。本当に超絶技巧の曲で、ヴァイオリンってこんな演奏ができたんだ、と
感服するほど。そのむずかしい曲でも音程がきわめて正確で、特に重音のまったく
ブレない美しい響きといったら!

休憩をはさんで、南さんのツィガーヌ。長大なソロに始まるこの曲は、ヴァイオリンの音を
たっぷり堪能できる。南さんの音は、芯が非常に骨太で、音量も素晴らしい。
口径の大きいところからどーんと音が出てくる感じというか、迫力があった。
ただ、オケとの掛け合いになると、ちょっと… とくに最後、テンポをどんどん上げるのは
いいんだけど、それで完全にオケを置きざりにしてしまっていたのが、残念。

最後のホァン・モンラさん。先日の講師陣のコンサートでも出演していた。
ただ、曲がね… 去年の五嶋みどりさんのあの強烈なチャイコンが耳にこびりついて
離れず、あれ以来、誰のを聴いてもそれと比較してしまうんですよね。
あの時、もうチャイコン聴けない、と思ったのは正しかった。というわけで、この曲に
かんしては、公平な論評は不可能な身体(耳)になってしまったのだ。
気を取り直して… この人の音は、とても独特なものだった。ほとんど切れ目なく音を
つなげて演奏する人で、しかも音が丸いというか、とんがったところがない。
つまり、ずーっとつるつるの音が続くのだ。ものすごく滑らかな絹とかの生地を、
するするって手繰り寄せているような、どこにも引っかかりのないなめらかな音。
だから、テンポとか拍がとりづらい感じで、クライスラー三部作とかだとものすごく
合うんだろうなと思ったけど、オケとバシッと合わせるとか、ビシッと従えるとか、
そういう雰囲気ではないのだ。オケとの丁々発止の掛け合いのはずが、するっと
躱されるようなイメージで、暖簾に腕押し、というとあんまりな表現だけど、
そのくらい飄々としたというか、まぁとにかく独特の魅力があることはたしかであるが、
コンチェルトにはちょっと…かな? 室内楽向きなんじゃないだろうか。

ともかくも、それぞれに個性ある4人のヴァイオリニストの音を聴き比べて、
大変楽しめた音楽会でした。
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