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ハオチェン・チャン ピアノリサイタル [コンサート]

2011年10月19日(水) @高岡文化ホール大ホール 19:00~

D.Scarlatti: ソナタ ホ長調 K.380
        ソナタ ハ長調 K.159
F.F.Chopin: 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
L.v.Beethoven: ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調「熱情」 Op.57

  *  *
M.Ravel: 夜のガスパール
F.Liszt: スペイン狂詩曲 S.254
(Encore) R.Schumann: 「子供の情景」より トロイメライ
       S.Prokofiev: ピアノ・ソナタ第7番 第3楽章
       中国湖南省民謡 渕陽河


去年の文化の日以来、11ヶ月ぶりのハオチェン君のリサイタル。
加賀でもコンサートが予定されているのだが、OEKとのコンチェルトで、どうせなら
ソロが聴きたいなぁと高岡まで遠征した。
ひとこと感想。ハオチェン君、反抗期突入か?


まずはスカルラッティの短いソナタを二曲。この人はとても綺麗な音と緻密な打鍵が
魅力で、スカルラッティではその魅力を存分に発揮していた。
とても粒が揃ったきれいな音が整然と連なっていて、それでいて表情も豊か。
続けてショパン。前回のコンサートでは、ものすごく静謐で緻密な前奏曲を聴いて
とても感動したので、私にしては珍しくショパンもとても楽しみだったのだ。
が、だいぶ雰囲気が違う? わりとわかりやすく盛り上げるありがちなショパン。
それでも甘ったるくはならないのがいいところだけど、あのとても独特の空気感は
あんまり感じられず、ちょっと残念な気がした。

そしてベートーヴェン。かなりテンポが速い。それでもってかなり激情型の演奏。
ウーム。とっても品行方正だったお坊ちゃまが、悪ぶってバイクなんか乗り回して
みたり、髪の毛染めたりしてみました、みたいな?
全体としてもともとのこの人の良さが失われたわけでは決してないのだが、
でも激情部分がとってつけたみたいというか…
腕や頭を振り回すパフォーマンスもかなり派手だったし、やっぱり反抗期の
イメージなんだなぁ。オレってカッコイイだろう?!というか…

休憩をはさんでのラヴェルは絶品だった。
オンディーヌの細かな右手は、もう信じられないくらいに綺麗で、水が流れ、
荒れ狂い、逆巻くさまが目に見えるよう。オンディーヌのまろやかな身体の
ラインが手に感じられそうなほど、なめらかで、色っぽく、悲痛なピアノ。
絞首台はゆったりとしたテンポに、絶妙にとられる間がとても不気味で効果的。
スカルボも、どちらかというと淡々とした演奏がより不可思議さと恐ろしさをかもし
出している。この超絶技巧曲で、これほど音のひとつひとつが綺麗な演奏は、
なかなか聴けるものではない。

そしてリスト。キラキラした色鮮やかな音が、スペインっぽさを盛り上げる。
前回もヒナステラを聴いたけれど、こういう華やかな曲にふさわしい、
こういう音もとてもステキだ。
が、やっぱり盛り上がる部分が… 正直、頭を振り回したり手を高く跳ね上げると
その分、音が荒くなってるんだよね。音の綺麗さが台無しだし、それにちゃんと
丁寧につかんでるところと上から叩きつけてるところでは、前者の方がはるかに
芯のあるしっかりした強い音が出てるんだけどなぁ。ミスタッチも増えるし。
もったいない。

アンコールは3曲。トロイメライはそれはそれは夢見るように綺麗だった。
最後の中国民謡も、これも素敵な曲だった。
2曲目、プロコの超絶技巧第三楽章は… まぁ、テクニックはあるんだけどねぇ。
かなり高速で、全曲叩きつけるタイプの演奏で、苦笑いするしかない感じ。
プログラムを見ても、演奏スタイルをみても、ホロヴィッツやかれの影響の強い
ヴォロドス、ギンディン、ガヴリリュク、故スルタノフ、あのあたりのピアニストが
カッコイイなぁ!って真似したくなったんだろうか。
オトコノコだもんね、そういう気持ちもわからないではないんだけど…
でも、ロシアあたりのごついお兄さんたちとはそもそも体格も違うし、もともと
持ってる魅力も違う。あの丁寧で緻密な演奏は、ほかの誰とも違うハオチェン君の
魅力でカッコイイと思うんだけどな。

とはいえ、もともととても巧い人だし、もともとの音の綺麗さなんかも充分に堪能
できて、ああ、成長期なんだなぁ、試行錯誤してるのかな、というのを、
いろんな意味でむしろ楽しく聴くことができた。
完成されたピアニストもいいけれど、こういう若いピアニストを追いかけるのも
その変化が楽しめて、いいものだと思いました。

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