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椿姫 [コンサート]

今夜は金沢歌劇座でヴェルディのオペラ「椿姫」。
ずいぶん昔に演奏会形式のオペラは見たことがあるのだが、ちゃんとしたオペラは実は
はじめてで、とても楽しかった。

第一幕、ヴィオレッタの屋敷でのパーティ。
女性たちのドレスがとても煌びやか。しかしあのパニエはすごいなぁ…
ヴィオレッタ役の森麻季さんのソプラノは、とても澄んでよく通って、すばらしい。
ベテラン佐野成宏さん演じるアルフレード君は乾杯の歌を高々と歌い上げる。
アルフレード君の告白場面はしっとりと、宴が果て暇を告げる参加者たちの合唱は
とても厚みがあって聴き応えがあった。
ただねぇ… 「享楽に備えて体を鍛えましょう」って、どんな翻訳なんだ。
原語は知らないけど、あまりにも色気がなさすぎてがっくり。

第一幕のクライマックスは、誰もいなくなった屋敷でのヴィオレッタの独白。
アルフレードの告白に戸惑い、喜び、でもやはり自分は享楽的な生活しかできないとの
諦めの気持ちを、とても美しいコロラトゥーラ・ソプラノで歌い上げる。
すごい高音まで透き通った綺麗な声。とても劇的で、変化に富んで、すばらしかった。

第二幕、パリ郊外のヴィオレッタの屋敷。
アルフレードに絆されたヴィオレッタは、華やかな生活を捨てて田舎でふたりで暮らし
はじめている。しかしここで、アルフレードはまったく呑気に幸せを歌うのだけれど、
生活費のことなんてまったく頭になく、ヴィオレッタが全財産を処分したのをメイドにきいて
はじめて焦り、取り戻そうと家を飛び出して行く。
そこにジョルジォ父さん登場。おお、バリトンの美しい声!
しかしパート上仕方がないのかもしれないが、息子の方がどうみても年上なんですねー。
ううむ、オペラではあまり外見は関係ないのかな?
最初こそ、息子がたぶらかされていると思って感じの悪い態度を取るのだが、
その後、切々と子どもたちのために別れてほしいと願い、泣く泣くそれを受け容れた
ヴィオレッタに対する温かい態度は、本当にいい男です。

それに引き換えアルフレードは… 裏切られたと思って父の言う事にも耳を貸さずに
屋敷を飛び出し、第2場、フローラの屋敷でのパーティに乗り込んで、衆人の前で
ヴィオレッタを罵倒。パーティの参加者たちからの非難を浴びて後悔するものの
ちゃんと謝ることもできず、父さんに「お前はもう私の誇りとした息子ではない」と
叱責されて(またこれが毅然として格好いいのだ)、当のヴィオレッタに庇われる始末。
もう、なんというか、ここまで情けない男に描いてしまって、なぜヴィオレッタが心変わり
しないのか、ほんと不思議でたまらない。
なおこの第2場では、宴を盛り上げるロマの女たち、そして闘牛士たちが登場して、
華やかな踊りを見せてくれる。バレエ団の人々です。

第3幕、ヴィオレッタの病室。
余命幾許もないヴィオレッタは、父から経緯を説明されたアルフレードが帰国するのを
待っている。
ようやくアルフレードとの再会、そしてジョルジォ父さんもあらわれる。またふたりで
暮らそうというアルフレード、再会できたからには死にたくないと願うヴィオレッタ、
そして彼女を憫れみ、自分が彼女に強いた犠牲を後悔し、せめて安らかに神の御許に
召されるよう祈る父さん。けどここでも「神様があなたを招いています」って、まるで早く
死になさいといっているかような翻訳は、かなりいただけません…
親子に手を取られ、元気が湧いてくるといいながら、事切れるヴィオレッタで幕。
最後の方、ヴィオレッタはふらふらと足元も定まらない感じで歩きながら歌っていたので、
カーテンコールでも森さんは少々足元がふらついているように見えてしまった。

それにしてもオペラって、ちゃんと直立して足を踏ん張って歌うだけでなく、座ったり、
横たわったり、あるいは倒れ付した状態でも歌わなくてはならなくて、それで全然
声量が落ちたりしないのは、本当にすごいなぁ… と思いました。
演奏会形式ではこの辺はわからないので。
それに初演時のエピソード、主役を演じたソプラノ歌手がふくよかすぎて末期の結核
患者にまったく見えなかったというアレだが、ドレスを着ているときはともかく、
たしかに第3幕の寝間着姿は、あんまりふくよかだと視覚的にきついかもね…
演技力でカヴァーするとはいっても、そもそもオペラの歌そのものが、いくら弱々しく
表現したところで声量としては相当なものだから、その点でもどうしても元気に見えて
(聴こえて)しまう。とても難しいものだなぁ、と思った。

イタリアオペラもいいけど、ドイツオペラも見てみたいものだ。
歌劇座がせっかく新しくなったのだから、いろいろな公演が開かれることを期待してます。
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